老化細胞の発生に関わるタンパク質の同定に成功 -加齢疾患発症を抑制する医療技術の開発へ期待-
群馬大学生体調節研究所(群馬県前橋市、佐藤健所長)の、小田司助教、佐々木伸雄教授らは、加齢疾患(がんや生活習慣病)の発症に関わる老化細胞の発生メカニズムに関する新たな発見をしました。
日本人の平均寿命は、男性81.5歳、女性87.6歳(2022年)ですが、自立的な生活が送れる健康寿命はこれより男性は8年、女性は12年ほど短くなっています。この主な原因はがんや生活習慣病などの加齢疾患によるものです。したがって、加齢疾患の発症を抑えることは「個人の生活の質」や「社会保障」を維持する上で重要な課題となっています。
近年、加齢疾患の発症に老化細胞が関与していることが明らかになってきました。このような理由から、世界中で老化細胞を除去できる薬剤の開発が精力的に進められています。一方で、老化細胞の発生のメカニズムは不明な点が多く残っています。私たちは、53BP1というタンパク質に注目し、細胞老化との関係を調べました。その結果、53BP1が細胞核内で凝集体を形成することが老化細胞の発生に重要であることを突き止めました。本研究で得られた知見は、老化細胞の発生を抑えることにより加齢疾患の発症を遅らせ、健康寿命を延ばす新しい医療技術の開発に結びつく可能性があります。
本研究の成果は2023年1月にWiley出版社のオープンアクセス誌 Cell Proliferationにおいて公開されました。
- 雑誌名:Cell Proliferation
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cpr.13398 - 公開日:2023年1月15日
- タイトル:”DNA damage-induced cellular senescence is regulated by 53BP1 accumulation in the nuclear foci and phase separation”
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